桃のはなびらから新緑へ 


弥生の頃のおはなしです。

春の高校野球をラジオで聴きながら手仕事をする。

緊張感があり一球一球、そのときどきが生きていて澄んでいる。
甲子園と高校球児が綴るこの物語は切なくも清々しい。

とりおり手紙を書く。
封筒を選んだり切手や封で悩んだり、万年筆にしようか筆にしようか、いや色鉛筆でイラストでもなんて楽しくなって誤字だらけの乱文というお粗末な内容なのにそのままほんのすこし気にしながら投函する。

そんなことをたまにしているとそういうお仲間からお便りが届いた。
ご縁でその方に会いに行った。
そこは茶話堂といいかつては印刷業をしている工場、いまは心地よい喫茶スペースとギャラリーで「詞音ーshion ー」という屋号のお店。その古い建物に沿う建具や小物が魅力的でひとつひとつの歩みを訊きたくなる。

高校生だろうか、ジャージを着た女性二人が来店し飲み物を注文していた。
どうやら常連さんのよう。
以前きたときは70代くらいの男性と20代くらいの女性が静かにコーヒーを飲みながらそれぞれの時間をたのしんでいた。

IMG_0227.jpg
4月15日ころの春日居町です。工房2階の窓から撮りました

はじめてここに来たのは昨年のゴールデンウィークだ。
駐車場の白いモッコウ薔薇がちょうど見頃で眩しくて、その向こう側の住宅地では大きな洗濯パラソルがくるくるくると迎えてくれて楽しい気分のまま時をすごした。

「シオンさんに行ってみたい」という私の言葉を覚えていてくれてお休みの日なのに休日ランチと銘打って「工房を建てる」打ち合わせをしてくれるsantahahaさんと看板メニューのビーフシチューをいただいた。
天気のいい連休の中日で、それほど混んでくることもなかったのでゆっくりと、でもおしゃべりは尽きなくて楽しいランチで「こんな感じの工房が理想だけれどこれは月日を経たからこそ醸し出される雰囲気だから、いつかこうなるような・・・」というようなことをオーナーさんにお話したり、いやまったくいいお休みだ。

IMG_0238.jpg
4月16日、引越後はじめての河川清掃でみつけた白花たんぽぽです。

そのころここ「川風の調べと紡ぐ家」はまだ名もない畑地だった。どこに建てるかも決まっていなかった。
キッチンはどうしよう、天井は、壁は、屋根は、だいたい家の大きささえ定まらず、でも打ち合わせはいつも本当に楽しかった。

その後エンドウ工務店さんにも幾度となく足を運ぶ。私が大遅刻をしたこともある。それでも笑顔で迎えてくれ心配をおかけしてしまっても私は負い目を感じることは全くなかった。
びっくり。

それはだめだ。

今思い出して、反省します。でもいままでそれを忘れさせる「おもてなし」だったのです。
遅刻をしてしまい申し訳ありませんでした。

IMG_0241.jpg
4月15日ころの写真です。この景色を眺めながら糸車をまわしておりました。

もうエンドウ工務店に行く用事はなくなってしまった。
ふらりと立ち寄っても変わらぬ笑顔で迎えてくれるとわかっていても、ひとくぎりがついたことも変わらぬ事実。

気分転換、一服するところ、そういうところをいくつか持っていると「よし!」と転んでも立ち上がることができます。

そしていつか行きたいところ、その場へたちたいところがあると前に進めます。

少し長くなりましたので今宵はここまでにいたします。

C.jpg
ランチバッグをつくりました。

はるなので


 今年はちょうど桃の咲く頃に桃染めをいたします。

 早稲田大学オープンカレッジで過去に何度が桃染めをしましたが
 今回は「まさにその」開花のころにあたります。

 IMG_0769.jpg

 冬の剪定した桃の枝を煎じて染めますが、
 開花した桃を愛でながら、その桃色とじっくりと向き合うことができます。

IMGP2650.jpg
 溢れる陽射しの下で

 新生活に役立つ布もいくつか染められたらと思っています。

 IMGP2652.jpg

 キッチンクロスとしてお弁当を包んだり、
 48cm四方なので首に巻くこともできます。
 リネンと紡いだタッサーシルクで手織りをしました。シルクのところだけしっかり色づきます。

 IMGP2651.jpg

 桃色に近い方は灰汁で媒染し、黄色系はミョウバンで媒染しました。
 当日はおはぐろ液も選択肢に入ります。

IMGP2653.jpg
こちらは灰汁の媒染です。

 このほか水筒カバーにミトン兼ポットマット、文庫本カバーなどなど

 明日の雨を経てきっときっとあたたかい春が・・・
 



はるなのに

なんでしょう。

 毎年この頃は気ぜわしいのにこの切なさ
 
 些細なことだけれど、心が震えること、胸がくくっとなることが
 日々訪れます。

 今日は妹の誕生日でした。
 妹の息子である甥は野球の試合で勝利しました。
 母の誕生日を果たして覚えていたかどうか。
 でも勝利がプレゼントになりました。

 妹の娘である姪は検査入院をしています。
 検査は無事終わり、あとすこしで退院できそうです。
 
 そんな姪にメールを送りました。
 「今日はなんの日か覚えている?」
 「ごめん、今日は眠くて・・・」
 「そうか起こしてごめん、今日はママの誕生日だから」

 すると姪から電話が
 「今日ってママの誕生日?」
 「うん」
 「うそ、最悪・・・」

 ずずっずずっ「うっ・・・」
 「ずっとここにいてくれたのに・・・なにもできなかった」
 涙を袖で拭いているような音がして
 「なにも・・・本当にどうしよう」

 「大丈夫だよ。◯◯に会えたことが一番のプレゼントだよ。
 そういうこと気にしないで元気になることがきっとママは一番うれしいから」
 
 反省しました。

 今年中学を卒業して高校に入学する姪、受験前にインフルエンザにかかったり精神的に苦しくなったり、そのたびにママが助けてくれたことが身に染みていました。でも中学生から高校生にあがるころ、素直に感謝を表現することが難しいのです。
 父親不在でもがんばるママに本当に感謝していて、そして入院するにはそれなりのお金がかかることも理解していて、そして今までママに対してちょっとわがままになってしまったことも、
 中学のある時期、私は自分で感情を調節できなくなることがありました。
 そういう自分が嫌だけれどどうしようもなくて。
 きっと姪もそうだったのでしょう。

IMGP2653.jpg
4月8日の早稲田大学オープンカレッジのサンプルです。

電話を切りしばらくして
 「おしえてくれてよかった。ありがと」
 とメールがきました。

 なによりも姪が元気になるのが妹への一番の誕生日プレゼントです。
 
 どうか、今日はゆっくり休んで◯◯。

春が一歩づつ


あの春の嵐あたりから
あたたかい陽射しやひだまりに包まれたとき、「ふんわり」と春の香りにも包まれます。

IMG_0161.jpg



IMG_0163.jpg


肌寒い夕のあのもうすぐ門出のときという、宙ぶらりんで切ないような、ほんわりした不安を背負いながらの心地よさ
春の気配です。

IMGP2647.jpg

このあと革をカットしました。
見つけた改良点からもうすこし、この入れ物と向き合います。


IMG_0160.jpg


水仙の花をいけよう。


 梅が青空へとてもキレイに蕾をつけていた。
 わさわさしている野生の枝を剪定し、こういうときは必ずキレイな色の花が咲くと、頷く。

 白梅から紅梅の色と、ゆかりの色を彩る。

IMG_0105.jpg


 ふとおもいかえして広げた池坊専応口伝

FullSizeRender-1.jpg


 地元では席書大会で、そういえば学生のころ、震えながらシモヤケの手で緊張したあの凛とした場で、墨の澄んだ香りに背筋が伸びたことを思い出す。見渡すとみんなとても上手で一番自分が下手だった。毎年そう思った。

FullSizeRender.jpg


 明日は馥郁の香に包まれて染める。

 もうすこし準備を整える。

 白い梅の枝から染めていく。
 メジロや鶯、梅の園「不老園」に出かけたあの山の景色、それぞれが持つ梅を思い起こしその手が染める。